イタリアのカラー写真界のパイオニアでもあるルイジ・ギッリ(Luigi Ghirri)の作品集。
作者は1970年代から1980年代にかけて壮大なプロジェクトに取り組み続け、特に制限や終わりを決めずに自由に制作を進めていた。
そこで生まれたイメージには、変化に翻弄されていたその時代の日常空間への共感を感じ取ることができる。
写真家として活動した短い年月の間に驚くべき数の写真を撮っており、その点において当時のヨーロッパでギッリに並ぶ者はいなかった。
そして遺された数多くの文書も、写真の歴史に非常に大きな影響を与えることになる。
膨大な数の作品を収めた本書は、イギリス人キュレーター、ジェームズ・リングウッド(James Lingwood)によって編纂され、
ヨーロッパの美術館3箇所で2018年から2019年にかけて開催される巡回展に伴い刊行。
展覧会では、1979年にパルマで行われた個展「Vera Fotografia」を一つの終着点とするギッリが写真家として撮り始めた最初の10年の作品に焦点が置かれ、
15の物語(※註)のシークエンスに分類し展示。本書にはその全てが網羅されている。
複製、図像、ポスター、模型、地図といった形で世界を描写することへ深い関心を抱き、そこから新たな種類の地理を作ろうとした。
本書の編纂においては、静かな感動を呼びおこすその制作に焦点が置かれている。
古きものと新しきものの間で揺れ動いていた当時のイタリアにおいて、
イメージを仲立ちとして世界を体験することは作者にとって調べても調べつくすことができない遥かなる大地であった。
「 思考と視覚の世界への大冒険、大人になってから気付くことと幼少期のおとぎ話の世界とを奇跡のように同居させることができる魔法の道具…
偉大なものと些細なものや、際限のない変化、そして空想と出現の領域、そんなものを通した終わりなき旅であり、
幾多の人々やシミュレーションによる鏡のように反射する迷宮のような場所である。」
− ルイジ・ギッリ
softcover / 198 x 248 mm / 376ページ / 2018